6歳で我が家に来た元繁殖犬と、トリミングサロンの話

先日、動物病院の先生から電話がありました。アジソン病のトイプードルの子がいて、トリミングを断られてしまったという相談でした。「恵比寿ちゃんは、どこでトリミングしているの?」先生は、困っているご家族の様子を気にかけているようでした。

病気があるというだけで、これまで当たり前だったことが急に難しくなる。病気を持つペットとの暮らしでは、そういう場面に出くわすことがあります。

6歳で我が家に来た元繁殖犬

恵比寿は、6歳で我が家に来た元繁殖犬です。それまでの6年間、繁殖犬として過ごしてきました。その環境が不幸だったとは思っていません。ただ、今の暮らしとは、安心の質や守られ方が違っていたのだろうな、と日々一緒にすごす中で感じることはあります。

迎えて2ヶ月ほど経った頃から、体調に違和感が出始めました。食欲が落ちたり、元気がなかったり、ふらつくような仕草を見せたり。そしてある日、立つことが難しいような状態になり、一時は命の危機といえる状態になりました。慌てて病院へ向かい、点滴と検査を受けたあの時の緊張感は、今でもはっきり覚えています。

診断が出るまでの数日間

その時点で獣医さんからは、アジソン病という病名を含めた説明を受けていました。ただ正直に言えば、その場では理解が追い付いていなかったと思います。初めて聞く病名で、聞き慣れない言葉も多く、話を聞きながら頭の中で整理しきれないまま診察室を出ました。「あとで落ち着いて調べよう」そう思いながら家に帰りました。

血液検査の結果が出るまでは、数日かかると言われていました。症状や副腎の状態から見て、アジソン病である可能性は高いと説明されていましたが、結果が出るまでは確定ではありませんでした。もし違っていたらどうなるのか。また別の病気だった場合、追加の検査が必要になるかもしれない。その検査は、恵比寿にとって負担の大きいものになる可能性もあります。

結果を待つ間、頭の中ではいろいろな可能性を考えていました。どの選択が、恵比寿にとって一番負担が少ないのか。どこまでを受け入れ、どこからを避けるべきなのか。簡単に答えが出るものではありませんでした。ただ、これ以上、恵比寿に苦しい思いをさせたくない。その気持ちだけは、はっきりしていました。

知らない病気だったから調べた

アジソン病という病名は、それまで聞いたことがありませんでした。家に帰ってから、インターネットで調べ始めました。症状、原因、副腎の働き、治療、予後。検索しては読み、また検索しては読み、気づけば時間が経っていました。

「急変」「命に関わる」「クリーゼ」そんな文字に、何度も手が止まりました。

同時に、もしかして自分の何かが原因で病気にさせてしまったのではないか、迎えたあとの環境や判断に問題があったのではないか、そんな思いも頭をよぎりました。

けれど調べていく中で、アジソン病は遺伝的な要因が関与していることが多い病気であり、飼い主の育て方や迎えたあとの生活が直接の原因になるものではない、という情報に行き当たりました。そのことで、すべての不安が消えたわけではありませんが、「自分の瑕疵で病気にしてしまったのではないか」という思いからは、少し距離を置けるようになりました。

アジソン病と暮らすということ

血液検査の結果が出て、恵比寿はアジソン病と診断されました。

治療や生活上の注意も、その診断を前提に進めることになりました。必要なホルモンを薬で補い、定期的に検査を受け、日々の体調の変化に気を配る。そうした管理を続けていけば、急激な体調悪化を起こすことは多くありません。

強いストレスや体調不良が重なったときには注意が必要ですが、普段の生活は穏やかに送ることができます。だから私は、アジソン病だからトリミングができない、とは思っていません。

トリミングを断る側の気持ち

今回の「トリミングを断られた」という話を聞いても、怒りの気持ちはありませんでした。持病のある子を預かるというのは、トリマーさんにとって簡単な判断ではないと思います。経験の有無、スタッフの人数、設備。何かあったときに対応できるかどうかを考えた結果、断る判断をすることも、その子を守るための選択です。

無理に受けて、取り返しのつかないことになるより、できないと正直に伝えるほうが誠実だと感じています。

恵比寿のトリミング環境

先生からの電話に対して、私はまず、動物病院に併設されているトリミングサロンを利用していることを伝えました。訪問型のトリミングについては、その場では話が及ばず、伝え忘れてしまいました。次回の通院の際に、改めて話をしようと思っています。

現在、恵比寿が利用しているのは、動物病院併設のトリミングサロンと、自宅で受けられる訪問型のトリミングサロンです。

なぜその選択をしているのか

ここで誤解してほしくないのは、体調が安定している場合であれば、通常のトリミングサロンでも全くと言って問題はないということです。アジソン病だから特別な環境でなければならない、という話ではありません。

それでも、動物病院併設のトリミングや訪問型のトリミングを選択肢として考えている理由は明確です。体調に変化があったとき、判断を迷わず医療につなげられる環境にしておきたいからです。

動物病院併設のトリミングであれば、施術の前後や途中の様子について、必要に応じて医療の視点で情報を共有しやすく、万が一の体調変化があった場合にも、そのまま医療的な対応につなげることができます。これは病院併設ならではの利点だと感じています。

訪問型のトリミングの場合も、自宅でのトリミングができることで、何かあったときにすぐトリマーさんと状況を共有できます。体調や様子に変化を感じた場合も、その場で意思疎通ができ、続けるか中止するかを素早く判断することができます。必要であれば、その判断のまま病院へ連れて行くこともできます。

共通しているのは、施術中に起きた変化について、トリマーさん一人に判断や責任を背負わせないという点です。施術するトリマーさんにすべてを委ねるのではなく、獣医師や最終的な判断は飼い主である自分が引き受ける。そのための環境づくりだと考えています。

福社長としての今

恵比寿は、繁殖犬として6年を過ごし、今はペットメモリアルドマーニで福社長として暮らしています。アジソン病と診断されてからも、生活そのものが大きく変わったわけではありません。体調を見ながら、いつもの日常を続けています。

私はペットメモリアル ドマーニとして日々ペットちゃんのお別れに立ち会っていますが、ご利用者の中には、現役でトリマーとしてお仕事をされている方がたくさんいらっしゃいます。本音を言えば、そうした方々に恵比寿のトリミングをお願いできたらと思う気持ちがないわけではありません。

それでも、あえてお願いしていません。恵比寿にはアジソン病という持病があり、体調が安定していても、万が一という可能性を完全に消すことはできません。仕事として預かっていただく以上、もし何かあったときに、必要以上の心配や責任を背負わせてしまうかもしれない。そのことを考えると、その選択はできませんでした。

大切なご利用者の方だからこそ、心配をかけたくない。技術や信頼の問題ではなく、立場として引くべき線があると考えています。

恵比寿のトリミングをどうするかという判断も、その延長にあります。恵比寿に無理をさせないことと同時に、関わる人にも無理をさせない。その二つが同時に成り立つ形を選び続けることが、福社長、恵比寿との暮らしで、私が大切にしていることです。

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