火葬文化に残る東西の違い

日本の葬送文化は、明治時代以降に大きく変化しました。もともとは地域によって土葬と火葬が混在していましたが、明治政府が一度「火葬禁止令(1873年)」を出したものの、すぐに撤回。その後は衛生面から火葬が推奨され、都市部を中心に広がっていきました。さらに戦後の都市化や公衆衛生の向上、墓地事情の変化なども重なり、火葬は全国的に普及。現在では火葬率が99%を超え、世界的にも突出した「火葬大国」となっています。

しかし、全国的に火葬が普及する中でも、地域ごとの習慣の違いはいまも残っています。その代表例が、火葬後の「収骨(骨上げ)」です。

東日本ではできる限りすべてを納める「全収骨」が基本。一方、西日本では主要な部分を中心に納め、残りは火葬場に残して供養処理とする「部分収骨」が主流です。

こうした違いは、実際に他地域で葬儀に立ち会った人に強い印象を与えます。東京で葬儀を経験した人が大阪で参列すると「なぜ全部拾わないのか」と驚き、大阪の人が東京で全収骨に立ち会うと「どうしてこんなに大きな壺が必要なのか」と戸惑うのです。

境界線はどこにあるのか

この東西差の境界はどこにあるのか、明確な線引きはできません。ただしよく言われるのが「糸魚川—静岡構造線」です。地質学的に日本列島を東西に分ける大断層であり、文化の境界としてもたびたび語られます。

実際に、愛知県や岐阜県では県内でも地域によって習慣が分かれています。愛知県の尾張地方は部分収骨が多く、三河地方では全収骨が主流という話もあります。岐阜県でも東濃と西濃で異なることがあり、単純に「県境」で分けられるものではありません。文化圏が複雑に入り組んでいるのです。

ペットメモリアル ドマーニの拠点である静岡県は全収骨が基本です。お骨は残さず骨壷に納めるという形が当然と考えられており、これが人間の火葬の文化として根づいています。そしてその習慣は、静岡県の訪問ペット火葬でも自然に反映されています。

ペット火葬に映し出される人間の習慣

ペット火葬には、人間のような法律上の決まりは存在しません。ペットちゃんの場合、死亡届や埋火葬許可証もなく、「死亡から24時間経たなければ火葬できない」という規制もありません。そのため、ご家族様の希望が第一に尊重されます。

静岡のような全収骨文化の地域では、ペットちゃんについても「全部を骨壷に納めたい」というご希望をいただくことが多いです。逆に西日本のように部分収骨が根づいている地域では「一部を収めれば十分」と考えるご家族様も珍しくありません。つまり、人間の葬送文化の差異は、ペット火葬の場にもそのまま反映されるのです。

あるとき、ペットちゃんのご火葬をさせていただいたご家族様で、関西訛りのある方がいらっしゃいました。お話の流れで「失礼ですが、関西のご出身ですか」とお尋ねすると、「そうなんです」と答えられました。そこで「関西では部分収骨が基本ですが、こちら静岡では全収骨なんですよ」とお伝えしたところ、その方は「こちらでは全部お骨を納めてもらえるのですね。うちの子の骨は全部手元に残したかったので良かった」とおっしゃいました。

この言葉からも分かるように、地域文化の違いはペット葬儀の場面にも影響します。人間の場合には地域の慣習に従わざるを得ないことが多いですが、ペットちゃんの場合には「希望どおりにできた」という安心が、ご家族様の心を支えるのです。

骨壷サイズ

収骨方法の違いは、骨壷のサイズにも直結します。

人間の場合、東日本では全収骨のために7寸以上の大きな骨壷が一般的ですが、西日本では通常は6寸で済みます。この差は、墓地や納骨堂の構造にも影響し、改葬の際に「骨壷が大きすぎて納まらない」という問題を引き起こすこともあります。

ペット火葬の現場でも同じことが起こります。小型犬や猫ちゃんであれば4寸の骨壷で全収骨が可能です。しかしレトリバーのような大型犬になると、小柄な子なら6寸で納まる場合もありますが、標準的な体格だと6寸だけでは収まらず、7寸の骨壺を使ったり、6寸に加え4寸といった複数の骨壺の組み合わせが必要になります。超大型犬に至っては、訪問ペット火葬では受け入れが難しいこともあり、現実的な制約が生じます。

地域の独特の作法として聞いた話

全収骨か部分収骨かという大きな違いに加えて、収骨の作法にはさらに細やかな違いがあることもあります。これまでお別れをお手伝いさせて頂いたご家族様から伺った話として、喉仏を特別に大切に扱い、最後に頭の上へ置くという習慣があると聞いたことがあります。

喉仏は頸椎の一部で、小さな仏像のように見えることからそのように呼ばれてきました。象徴的な意味を込めて特別に扱われることがあるようで、火葬という行為が単なる処理ではなく、文化や信仰と結びついていることを感じさせます。

ペットちゃんの火葬においてこのような作法は存在しませんが、人間の葬送文化を知ることは、ご家族様が「どのように送りたいか」を考えるヒントになります。

法律における違い

人の火葬には、いくつもの法的な制約があります。まず大きなものが「24時間ルール」です。死亡から24時間を経過しなければ火葬できないと墓地埋葬法で定められており、これは誤診防止や衛生面から生まれた制度です。つまり、人のお別れは「気持ち」だけでなく「法律」にも従わざるを得ません。

さらに、人の火葬は必ず「火葬場」で行う必要があります。自宅の庭や山林で勝手に火葬することは法律で禁じられており、違反すれば処罰の対象になります。遺骨を納める場所も、行政が許可した墓地に限られます。葬送そのものが制度の枠組みに組み込まれているのです。

一方、ペットちゃんにはこうした全国的な法律はありません。24時間ルールもなければ、火葬場の使用義務もありません。ところがその代わりに、法律上はペットちゃんの遺体が「一般廃棄物」と同じ扱いを受けることがあります。自治体に引き取ってもらえば、人間のように「火葬」ではなく「焼却処分」とされる場合もあります。

もちろん、多くのご家族様にとってペットちゃんは「廃棄物」ではなくかけがえのない家族です。だからこそ、専門のペット火葬業者を選び、人と同じように骨壷に納め、供養をされるのです。しかし現実には、制度上の位置づけにはまだ大きな隔たりがあります。ペットちゃんは家族だと社会全体が声をそろえて言えるようになるまでには、依然として高い壁があるのです。

文化と想いのはざまで

人の葬送における全収骨と部分収骨の違いは、地域文化として長い歴史の中で受け継がれてきました。ペット火葬においては、そうした文化の影響を受けながらも、ご家族様の気持ちがより直接的に反映されます。

全部を収めたい、一部を分骨して手元に残したい、粉骨して散骨したい。いずれも間違いではなく、それぞれに「どう送りたいか」という想いが込められています。

近年では、散骨や樹木葬といった新しい供養の形も広がりを見せています。自然に還すことを選ぶ方、記念樹の根元に眠らせたいと願う方、あるいは小さな骨壷やメモリアルグッズに納めて日常で寄り添いたいと考える方もいます。こうした多様な選択肢は、ペット葬儀やペット火葬が単なる処理ではなく、供養の文化として広がっている証といえるでしょう。

静岡県で訪問ペット火葬を行っていると、ご家族様から「人と同じように供養してあげたい」「地域の習慣も大事にしたい」という声を多くいただきます。ペット葬儀は、ご家族様の想いを形にする大切な時間であり、地域文化や習慣を背景にしながらも、ご家族様の気持ちを第一に考えたお別れが求められているのです。

火葬の地域差を知ることは、単なる知識の話ではありません。それは、ご家族様が「自分たちらしいお別れとは何か」を考えるきっかけになります。ペットちゃんとのお別れに正解はなく、文化に影響を受けながらも、ご家族様が納得できる形で送り出すことこそが大切なのだと思います。

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